法然上人を宗祖と仰ぐ浄土宗は、21世紀を迎え、すべての人びとの幸せを願って、ここに宣言する。



 20世紀は人間の限りない可能性を信じた時代であった。科学技術の進歩、合理的思惟、それらは人間の生活や文化の領域を拡大してきた。
しかし、一方、恐るべき核兵器の開発、国家や民族間の対立、地球環境の破壊、人間の欲望の肥大、家庭の崩壊、道徳や教育の荒廃など負の遺産もまた生じた。

これらを引きつがざるをえない我々は、法然上人の説かれた「愚者の自覚」に立ち返って、これを解決すべく平和、環境、倫理、教育、人権、福祉などの諸問題に取り組まなければならない。

法然上人は、阿弥陀仏の本願(ほんがん)を信じて念仏をとなえることから、真実の生き方が生まれ、阿弥陀仏の世界へ往生することができると説きつづけた。そして、「南無阿弥陀仏」の念仏は、多くの人びとの救いとなった。
法然上人は、煩悩(ぼんのう)にとらわれた人間の哀しみをみつめ、新たな救いを見出したのである。
「浄土門は愚痴(ぐち)に還りて極楽(ごくらく)に生ず」「智者(ちしゃ)のふるまひをせずして、ただ一向(いっこう)に念仏すべし」が、法然上人の教えの到達点であった。ここには、なによりも自らのいたらなさを見つめる「愚者の自覚」があった。
この人間観こそ、21世紀の諸問題を解決する出発点である。

  仏教の根本思想は「縁起(えんぎ)」である。縁起とは、すべての「いのち」はひとつに結ばれ、共に生かし、生かされることである。
『願共諸衆生(がんぐしょしゅじょう) 往生安楽国(おうじょうあんらっこく)』を願った中国唐の善導大師(ぜんどうだいし)を師と仰いだ法然上人の心こそ、縁起の思想をふまえた「共生(きょうせい)」である。この「共生(ともいき)」の教えこそ、21世紀の指針となろう。
浄土宗は、住職、寺族一丸となって、法然上人の心を家庭に、社会に、世界に広げていくことを誓う。

浄土宗


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